農業を通じて「地域コミュニティ」と「資源の循環」をデザインする学生団体、きぬがさ農園Kreisさん。彼らは、野菜作りはを通して多様な世代が繋がるための機会を提供されています。大学の落ち葉を腐葉土に変え、育てた野菜を学食へ提供する。そんな身近な「循環」から生まれる新しい交流の形や、SDGsを「楽しむ」という独自のスタンスについて、活動の核心を伺いました。
プロフィール

きぬがさ農園 副代表(インタビュー当時) 立命館大学の学生を中心に、地域住民や小学生、大学職員と共に活動。自身も農業未経験からスタートし、現在は「農業を通じた多世代交流」の場作りを牽引している。
インタビュアー CIL(Create interdisciplinary learning) 様々な団体さんにインタビューに行き、「団体さんと団体さん」、「団体さんと参加者さん」の架け橋になるような活動をしている。本Webサイトの運営団体。
「農業」は、異なる価値観を持つ個人を繋ぎ合わせる「媒介物」
――きぬがさ農園さんは、学食への食材提供や料理交流など、非常に活発に活動されていますね。若者の農業離れという課題に対して、どのような意識を持って活動されているのでしょうか?
きぬがさ農園: 実を言うと、僕たちの活動は、いわゆる「農業そのもの」にはそれほど注視していないんです。こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれませんが、僕らにとって**農業はあくまで「手段」なんですよ。重点を置いているのは、農業という営みを通じて生まれる「繋がり」**のほうなんです。
もちろん、学食に野菜を提供することは、僕たちの活動や、その背景にある「落ち葉から作る腐葉土」の存在を知ってもらう大切なきっかけになります。でも、サークルメンバーのほぼ全員が農業未経験の状態から始まっているんです。知識がなくても、地域の方に「どうやるんですか?」と聞きながら、和気あいあいと作業をする。水やりという地道でしんどい作業を毎日続けて、その末にようやく「収穫」という目に見える成果が出る。その喜びを分かち合う過程で、学生や地域の方が自然と一つのコミュニティになっていく。その「一つの共同体になれる楽しさ」こそが、農業を媒介にする一番の意味だと思っています。
――「一人でやるのではなく、みんなでやる」ことに意味がある、と。
きぬがさ農園: そうです。もし農業がなければ、大学生が地域のおじいちゃんやおばあちゃんとこれほど深く関わる機会なんて、今の時代まずありませんから。僕自身、この活動に参加するまでは同世代としか関わりがありませんでした。でも、この農園という場があるおかげで、自分とは全く異なる世代や価値観を持つ人たちとフラットに交流できるようになった。この体験こそが、農業が持つ「コミュニティを作る媒介物」としての可能性なんだと実感しています。
「ゴミ」が「資源」に変わる――身近なところから生み出す「循環」の兆し

――活動の大きな柱の一つに「循環」がありますが、具体的にどのような気づきがありましたか?
きぬがさ農園: 現代の人間って、どうしても「消費」に偏りがちですよね。でも僕たちの活動には、「社会問題に対してできることは意外と身の回りにある」ということを体験してほしい、というモットーがあります。
一番分かりやすいのが、大学の落ち葉です。そのまま放っておけば、ただの「ゴミ」として回収され、捨てられてしまう。でも、そこに少しの知恵と行動を加えればいいんです。落ち葉を集めて、水と米ぬかを混ぜて発酵させる。これだけで、誰でも簡単に栄養たっぷりの「腐葉土」が作れます。特別な知識なんていりません。
――日常で見過ごされているものが、自分たちの手で価値あるものに変わるのですね。
きぬがさ農園: はい。自分たちで作った土で野菜を育て、それが巡り巡って大学の食堂で提供される。「地域から始まって、地域で終わる」。 このように、すべてが「きぬがさ地域」という非常に身近な範囲で完結する地産地消のサイクルを目の当たりにすると、環境に対して起こせるアクションって意外と身近にあるんだな、と循環の兆しを感じることができるんです,。
この「資源」は物理的なものだけではありません。例えば、馬術部から馬糞を堆肥として譲り受けたり、関連サークルと連携したりと、学内の様々な場所との繋がりも「資源」として循環し始めています。
おばあさんの健康と、学生の成長。世代間で巡る「エネルギー」

――地域の方(15〜20名)や小学生も参加されているとのことですが、多世代が混ざり合うことで生まれるメリットは何でしょうか?
きぬがさ農園: 世代が違えば、持っている価値観も知識も全く違います。小学生と接していると、彼ら独自の純粋な認識に触れて、自分自身がハッとさせられたり、初心に帰れたりすることがよくあります。逆に、人生経験豊かな年配の方々からは、農業の知識だけでなく、生き方そのものを学べるような貴重な話を伺えます。
――地域の方との交流で、特に心に残っているエピソードを教えてください。
きぬがさ農園: もともと足腰が悪かったおばあさんが、農園に通って僕たちと一緒に活動するうちに、「活発に動けるようになって、今は健康になった」と言ってくださったんです。これは、単なる野菜作りの枠を超えて、僕たちの持っている「若いエネルギー」が地域の方に還元された、一種の「世代間での循環」だと言えるのではないでしょうか。
今では、農園の前を通りかかる地域の方が「何やっとるんや」と気軽に声をかけてくれたり、地元の神社の副神主さんとのご縁で、大学生メンバーが地域のお祭りに招待されたりすることもあります,。最初は、大学の職員さんのコネクションから始まった繋がりでしたが、今では「友達」のように付き合える関係性が築かれています。農園の外にも、確かなコミュニティの輪が広がり始めていると感じています。
「SDGs」を理屈ではなく「楽しい体験」として刻む

――社会問題としてのSDGsや環境問題に対して、どのようなスタンスで取り組まれていますか?
きぬがさ農園: SDGsや環境問題は、もちろん考えるべき大切なことです。でも、真面目に深く考えすぎると、興味がない学生にとっては「よくわからない遠い存在」になってしまいがちですよね。
だからこそ、僕たちは「楽しむこと」を大前提に置いています。無理をして取り組むのではなく、自分たちが「楽しい」と思ってやってきた活動を後から振り返ってみた時に、「あ、これって実は環境問題へのアクションになっていたんだ」と、逆説的に気づくような形が理想だと思っています。
――「実感」が伴っているからこそ、自分事として捉えられるのですね。
きぬがさ農園: その通りです。Well-being(幸福感)と社会問題を組み合わせることで、活動へのハードルを極限まで下げていきたい。特定の誰かに限定せず、SNSで連絡をくれた人や、金曜日の活動日にふらっと農園に来てくれた人を、いつでも「ウェルカム」な状態で迎えたいと思っています。
農業という場を通じてコミュニティが生まれ、循環を肌で感じ、結果としてSDGsが身近になる。この「楽しい循環」の輪を、これからも大切に育てていきたいですね。
本記事は、学生団体「きぬがさ農園」へのインタビューをもとに構成しています。 きぬがさ農園では、学生・地域住民問わず、共に土に触れ、コミュニティを育む仲間を募集しています。興味のある方は、ぜひSNSをチェックしてみてください。